11月11日、12日の2日間、高田馬場の科研製薬セミナールームにてモクダ主催の歯周組織再生療法のセミナーのお手伝いを当院の院長がさせていただきました。
歯周組織再生療法とは重度の歯周病の患者様に対して選択される術式です。そもそも歯周病とは歯周病原細菌とよばれる細菌感染により歯の周囲の組織に炎症が起こって発症します。感染すると言っても実は歯周病原細菌はどの方のお口の中にも存在しています。しかしブラッシングなどのお口の管理が悪くプラークが多く蓄積してしまった場合に歯周病は進行してしまいます。進行の度合いは人それぞれであまりブラッシングしていない方でもそこまで進行しない方もいますし、ある程度歯ブラシがしっかりできていても進行が急激に起こる方もいます。そして歯周病が重度に進行してしまうと歯の周囲の歯槽骨と呼ばれる顎の骨が溶かされてしまいます。そうなると歯周病原細菌は深部まで進行します。しかし深部まで進行した細菌を歯ブラシで除去することはほとんどできないため、歯周病はどんどん進行してしまいます。そんな重度の歯周病に対してはご自身で行うブラッシングや通常のクリーニングなどでは歯槽骨の形態の改善までは望めません。そのような状態に対して、歯槽骨など歯の周囲の組織を再生させることができる方法が歯周組織再生療法と呼ばれる術式になります。
今回はその歯周病治療の中でも歯周組織再生療法にフォーカスしたセミナーのお手伝いをさせていただきました。セミナーの講師をしていただきました先生は石川県のなぎさ歯科クリニックの院長であり、歯科のスタディーグループである5D japanの設立者でもある船登彰芳先生、私が龍ヶ崎に戻る前まで9年近く勤務させていただいいた有楽町デンタルオフィス・稲毛デンタルクリニックの院長で歯周病学会専門医・指導医、5D japanで講師をされている片山昭彦先生のお二人でした。両先生は私も今まで非常にお世話になっており、歯科臨床の多くを学ばせていただきました。船登先生、片山先生は歯周病・インプラント治療において日本のみならず世界でも活躍されている先生で、今回のセミナーは私自身お手伝いという立場ですが毎年非常に楽しみにしているセミナーです。
リグロスとサイトランスグラニュール
続いてセミナーで使用されているリグロスおよびサイトランスグラニュールとは何なのか説明させていただきます。まずリグロスは「rhFGF-2:塩基性線維芽細胞増殖因子」(https://regroth.jp/index.html)と呼ばれる製剤で、医科の分野で褥瘡、皮膚潰瘍に対してフィブラストスプレーとよばれる薬剤として使用されていたものが元になります。またサイトランスグラニュールとは世界初の「炭酸アパタイト」を主成分とする日本で初の「インプラント周囲を含む歯科領域での使用」が認められた顆粒状の骨補填材です。リグロスもサイトランスも現在、歯周組織再生療法においては広く利用されている材料になり、これらの材料を使用して重度に進行した歯周病により大きく溶けてしまった歯槽骨も再生させることができるようになりました。しかし歯周組織再生療法はとても難易度の高い治療で、手術を行う歯科医師の診断力や技術力に特に左右される治療です。そのため歯周組織再生療法は一朝一夕で習得できるものではなく、何年も研鑽・アップデートをしなければ自分のものにできない技術です。
切開線の設定の重要性
セミナーでは歯周組織再生療法の過去から現在までの変遷と最新の知見を交えて非常に密度の濃い講義をしていただきました。先ほど歯周再生療法は難しい治療とお伝えしましたが、手術の失敗のひとつとして歯と歯の間の歯間乳頭が術後に壊死してしまい思うように再生しないことがあります。このような失敗は歯周組織再生療法を行う歯科医師をたびたび悩ませます。本セミナーではそのような失敗を起こさないよう特に「歯間乳頭部の切開線の設定」の重要性について強調してお話されていました。術後に歯間乳頭など縫合した部分が開いてしまう(壊死や裂開)と、中に入れた再生材料が外に流れ出てしまい手術がうまくいきません。船登先生、片山先生が今回お話いただいた方法はとても革新的で可能な限り乳頭には切開を入れないで常に術後の結果を良いものにする方法と感じました。私も非常に学ぶことが多く、飯島歯科医院へ今回学んだことを還元し、歯周病でお困りの患者様を一人でも多く救っていきたいと考えております。