歯周病治療は終わってからが本番?歯を失うリスクを高める「見えない骨の欠損」とは

ブログ

「歯医者さんでの歯周病治療が終わったから、これで一安心!」と思っていませんか?
実は、歯茎の痛みや腫れが治まっても、お口の中には「目に見えないリスク」が潜んでいるかもしれません。
特に30代から60代は、仕事や家事、育児に追われてついご自身のケアを後回しにしてしまいがちですが、この時期のケアが「一生自分の歯で食べられるか」を大きく左右します。
今回は、最新の歯科医学研究をもとに、歯周病治療後も注意すべき「骨の欠損」について分かりやすく解説します。大切な歯と、ご家庭の医療費を守るための有益な知識をお届けします。

歯周病治療が終わっても安心できない?「見えない骨の欠損」とは

歯周病は、歯を支えている「顎の骨(歯槽骨)」を溶かしてしまう恐ろしい病気です。
治療によって歯茎の炎症が治まり、歯と歯茎の溝(歯周ポケット)が浅くなっても、一度溶けてしまった骨が自然に完全に元通りになるわけではありません。

とくに注意が必要なのが、骨が部分的に縦方向へ深く溶けてしまう垂直性骨欠損という状態です。外からは見えませんが、レントゲンを撮ると骨がV字型に深くえぐれているのが分かります。 この垂直性の骨欠損が治療後も残っている状態(RVD:残存垂直性骨欠損)は、将来的に様々なトラブルを引き起こす「歯周病の火種」になることが明らかになっています。

「垂直性骨欠損」が残っている歯にもたらす3つのリスク

2024年に発表された長期的な追跡研究では、この垂直性骨欠損が残っている
歯には、次のような大きなリスクがあることが分かりました。

  1. 歯を失う(抜歯になる)リスクが約2.3倍に跳ね上がる
    欠損がなく平坦な骨の形をした歯と比べると、垂直性骨欠損が残っている歯は、将来的に歯周病が進行して歯失うリスクが2.28倍も高くなることが報告されています。
  2. 治ったはずの「歯周ポケット」が再び深くなる
    治療によってせっかく歯周ポケットが4mm以下の健康な状態に改善(閉鎖)したとしても、油断は禁物です。骨の欠損が残っていると、その後のメンテナンス期間中にポケットが再び深くなってしまうリスクが2倍(健康な状態を維持できる確率が半分)になります。汚れが溜まりやすい深い溝が復活しやすくなるのです。
  3. 再治療が重なり、治療費(コスト)が約30%アップする
    状態が悪化しやすいということは、それだけ再治療が必要になるということです。研究によると、垂直性骨欠損がある歯はそうでない歯に比べて、生涯のメンテナンスにかかる追加の治療費が約30%も高くなることが示されています。お子様の教育費などで出費が重なる世代にとって、予期せぬ医療費の増加はなるべく避けたいところですよね。

リスクをさらに爆発させる「要注意な生活習慣」
ただでさえリスクの高い骨の欠損ですが、患者さん自身の全身状態や習慣が加わると、歯を失う危険性はさらに跳ね上がります。

  • 糖尿病: 糖尿病を患っている方は、そうでない方に比べて歯を失うリスクが4.71倍になります。
  • 重度の歯周病: 治療を始める段階で重度(ステージIV)の歯周病だった方は、歯を失うリスクが約4倍(3.84倍)に上ります。
  • 歯のグラつき: 歯に動揺(グラつき)がある場合も、リスクが3.64倍になります。

生活習慣病と歯周病は密接に関わっているため、お口の中だけでなく全身の健康管理も非常に重要です。

大切な歯と家計を守るために!私たちができる対策

では、ご自身の歯に骨の欠損があると言われたら諦めるしかないのでしょうか?決してそんなことはありません。
根本的な解決策として検討したいのが「歯周組織再生療法」です。これは、特殊な材料を使って、溶けてしまった骨や歯周組織を新しく再生させる高度な治療法です。垂直性骨欠損にはこの再生療法が非常に効果的であることが分かっており、リスクを大幅に減らすことに繋がります。
そして何より大切なのが、「歯科医院での定期的なメンテナンス」を絶対に中断しないことです。お口の状況をプロの目で厳しくチェックし、専用の器具でクリーニングを続けることで、病状の悪化を食い止めることができます。

まとめ

歯周病治療は「痛みがなくなって終わり」ではなく、「終わってからが本当のスタート」です。
治療後も縦方向の骨の欠損が残っている部位は、再発しやすい要注意ポイントです。ご家庭の負担となる医療費を防ぎ、いつまでもご自身の歯で美味しい食事を楽しむために、ぜひかかりつけの歯科医院でご自身のリスク状態を確認し、定期的なメンテナンスを継続していきましょう!

関連ページ
当院の歯周病治療

参考文献
Saleh M.H.A. ら(2024年). 「治療後に残存する垂直性骨欠損がもたらす歯
周病進行のリスク、再治療率、および治療費への影響」, Clinical Oral
Investigations, 28:446.